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もともとクラスでも関わり合いを最小限に抑えるため、好かれず嫌われずの立場を限りなく努めている。
クラスに一人はいるであろう少し無口で、しかし自分がやるべき事だけはしっかりとこなし、クラスの半分に好かれ、半分には嫌われる、そんな公平で平均的な人間像を目指した僕は、見事にクラスのメンバー全員から平均的に嫌われていた。
……人間関係は難しい。だからこそ、最小限に抑えておきたいのだけど。
原因がどこにあったのか、その主な理由が以前の風貌だったのだと気付かされたのは、教師に生徒手帳を見せての本人確認を終えてからの授業後、昼休み。
僕は初めてクラスの女子から昼食に誘われた。
なぜ誘ってくれたのかと訪ねてみれば、以前は古井戸在住の某幽霊みたいで不気味だったとか、野ざらし感まる出しが無造作を飛び越えて不潔にしか見えなかったとか、等々。
どうにも思春期真っ盛りの彼女達は好感度における上下が外面的部分に依存し過ぎているような気がする。
皆、見た目に捕らわれているのだろうか。
もしかすると、僕のクラスだけかもしれないけれど。
もしもしかすると、他の社会も案外そんなものかもしれないけれど。
何より、僕が一番僕自身の見た目に捕らわれているのだろうけれど。
「ふむふむ、うんそうだな、私とした事がこんな噂に流されるだなんて、らしくないことをしてしまったよ、いやはやすまないね、ご令嬢」
「まったくだよ、次からは気をつけてほしいね。しかし、見た目が代わっただけで本物が偽物かを疑われるだなんて、少なからず僕はショックだったよ」
やっぱり君なんじゃないか、と最初から解りきっていた事を身空木は楽しげに笑った。
どうせなら完全に別人と思われる方が僕としては嬉しい話だ。
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