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うまく誤魔化せたと思ったのに、むしろツイン好感度上がると思ったのに。
「訂正します、僕はツインテールが好きなんです」
「ん? だったら髪伸ばして自分ですれば? でもわりとめんどうよ、これ」
そう言って、不思議そうに自分のツインテールを両手でふさふさとさせてくれる削雛さん。でもさすがに自分でするのはちょっとイヤかなぁ。
「削雛さん、彼女は丁度今朝方、長かった髪を切ったばかりなそうなんです」
「あぁ、あるある、切った途端に長い方がよかったような気がするもんよね」
「隣の芝生は長く見えると言いますもんね」
長く見えちゃだめじゃないかなぁ芝生、手入れしようよお隣さん。
「ふぅん、まぁその顔立ちならそっちの方が似合ってるんじゃない」
「私もそう思います、よかったですね、シュウ子ちゃん」
「誰がシュウ子だこら」
「あら恐いですね、女の子がそんな言葉使いしちゃだめですよ」
「誰が女の子だこららん」
「何言ってんの、あんた女でしょ?」
削雛さんが再び首を傾げていた。そういえば、身空木の嘘になれきってしまったせいで訂正するタイミングがついつい後れてしまった。
「いえ、僕は男ですよ」
「……ウソでしょ?」
「ウソをついてるのはこの身空木です。僕は歴とした男ですよ、削雛さん」
その言葉を聞いてすぐさま身空木を見る削雛さん。当人が肩をすくめて嘘を肯定したところで、すぐさま視線が僕へと返ってきた。
「ほんとうに男なの!? え、ちょ、だ、だって!」
削雛さんがツインテールを逆立てそうな勢いで驚いた。
でもこういった反応にも今朝方の教室で体験していたおかげか、わりとショックじゃない。
人生どんな経験がどんな所で役に立つかわかったもんじゃないもんだ。
「だってこんなにヒラヒラエプロンが似合ってるのに!?」
ごめんなさい、僕もウソをつきました、これはワリとショック。
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