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「だから私は怪談話を引き取って欲しいわけじゃないって言ってるじゃない」
「しかし私共にできるのは怪談話の売買です。怪談話を買い取り、同じくお客様の満足していただけるような怪談話、もしくはそれに値する何かをお渡しすることでお支払いとさせてもらう、これがこの部の活動なのですよ」
確かに、この怪談部の活動主旨は校内にある怪談話の買い取り、もしくは下取りを行い、それに準じた支払いをするという、かなり風変わりな部活動をおこなっている。
それもこの御影ノ学園ならではと言うべきなのだろうけど、この学園には多くの怪談話が点在していると同時に、それらを知り得る事が一種の価値として扱われる傾向にある。
誰からも怖がられる怪談話を語れる事が一つの価値になる。
誰も知らないような怪談話を語れる事が一つの価値となる。
霊怪現象の体験が大きなステータスとされる。
ここでは学園を市場に見立てて、怪談話が流通しているのだ。
現に教師達の目が届かない場所では怪談話をするかわりに、学食食券を代金として請求する事はよくある。
より恐い怪談話はより高い価値を持ち、しかしそれを語れば価値は日に日に下がり、また新しい怪談話が持ち上がってはしのぎを削っている。怪談部がおこなっているのは、怪談話の相場をリサーチし、持ち込まれる怪談話を収集し、分析し、売り買いする。
言わば、怪談話のトレーダー、オカルトディーラー、それが僕達がやっている部活動となる。
「でもそれは普通科オカルトディーラー怪談部の表向きな活動でしょ?」
丁度、豆を挽き終わったところで、僕も身空木も動きを止めた。
「私だってなんの下調べもせずに来たわけじゃないわ。第六旧校舎の屋上、普通科怪談部の活動は他にもある。私が依頼したいのは、むしろそっち側の方よ」
「……と、おっしゃいますと」
「 “怪談殺し” 」
間髪いれずに、削雛さんはそう言った。
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