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「あんた達、この学園で価値の有りすぎる怪談の評判を落として廻ってるらしいじゃない。自分達が保有する怪談話の価値を下げることに繋がるような過ぎた怪談話、それも他の学科に存在する怪談話ばかりを調べに調べつくして、暴きに暴いて、怪談のタネを明かすことで価値を落とす。そうやって自分達の学科にこそ本当に恐い話や体験だけが集中すれば、それだけ保有する話の価値は自ずと上がるものね」
僕はコーヒーミルから挽いた豆をペーパーへと流し込む。
「それはただの言いがかり、悪い噂ですよ。それにこの学園は他の学科校舎へ足を踏み入れることは硬く禁じられているのはご存じでしょう。絶対厳守令、他の学びの園を穢すべから――」
「それは“一般生徒”絶対厳守令よ」
僕はペーパーに流し込んだ粉をスプーンで軽くならす。
「………………」
僕はポットの湯加減を確認する。
「どんな法にも例外者はいる。私がここにいる時点でこの問答は茶番でしょ」
僕は身空木を見る。営業スマイルが消え失せているのに気がつく。
お茶くみ係の僕が言うのもなんだけど、このやり取りは確かに茶番だった。
御影ノ学園絶対厳守校則
【学園の許可無く、他の学科への進入、もしくは干渉行為を硬く禁じる】
御影ノ学園の徹底的に厳守を強いられる校則はいくつかある。
その最たる令をあげるなら一般生徒の規定時間外における校舎への進入禁止令だ。
午前六時から午後六時、一般生徒が校内にいていい時間はこの一二時間と決められている。
校舎への無断侵入禁止は他の学校でもよくあることらしいけど、だけど御影ノ学園はここでさらに一文追加される。
御影ノ学園絶対厳守校則・規約
【規定時間外における校内での全ての行為に対し、学園側は一切の責任を負わない】
乱暴な言い方をすれば規定時間外で校内にいた場合、怪我をしようが、迷子になろうが、秘密組織に狙われて命を落とそうが、学園側は知ったこっちゃねーす、ということらしい。
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