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「どれもこれも普通の人間が起こしうる話ばかりじゃないか」
確かに、霊怪現象と呼ぶにはどれも生々しい話ばかりだ。
それにこの学園では霊怪現象による被害を偽証する人間も少なくはない。
怪談話の登場人物になることが一つのステータスなのなら、もっとも手っ取り早いのはその当事者だと語る事だ。
信頼されるかどうか、信憑性を得られるかどうかは本人とその怪談の浸透力によるとして、この場合、複数の目撃情報によって生まれた信憑性に後乗りしての偽証行為は充分に考えられる。
「ハッキリと言おう、これは君が招いた私情に絡む他愛のない現実だよ」
「いいえ、これは全部ドッペルゲンガーの仕業よ」
「ほう、言い切るときたか、だがその意味を本当に解っているのかね?」
身空木は立ち上がる。
ゆるりと背を上げ、ふらりと近寄りながら、
「ただの噂話とかわらない怪談の存在を、夢幻の魑魅魍魎の存在を、闇に紛れる怪物達の存在を、そんな思春期の妄想的な産物を――」
詰めより、見下ろし、そして言う。
「――お前は本当に信じられるのかい?」
笑っている、嘲笑している、そんな身空木を見上げ、睨み、
「ええ、怪物はこの世界に存在している、この証拠が見たいのなら、今見せてあげるわよ」
と言って、削雛さんは立ち上がっておもむろに服を脱ぎ始めた。
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