ドッぺru原画ー ノ 壱

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 「え、いや削雛さん、いきなりなにを」  「いいから見てて、あんたになら、見られても大丈夫だと思うから」    止まらず、ブレザーのボタンを外しては滑らせるように脱いで、セーター姿の細い両肩が現れる。    視線を下げて逸らしながら、僅かに上気させる桜色の両頬。    固く結んだ唇を解いて、セーターの裾へと手をかけ、削雛さんがゆっくりとセーターを脱いでいく。  そんな……いささか唐突すぎじゃないだろうか。  こんな所で?  身空木の前で?  まだ手も繋いでないのに?  ご両親への紹介もまだなのに?  まだ心の準備もできてないのに? 「……なんで君までエプロンを外して、学ランを脱ごうとしているんだね」 「うるさい、男には腹をくくらないとならない時があるんだよ」 「私は君の国宝級のバカさ加減に舌を巻きそうだよ……ちゃんと見たまえ」 「言われなくてもしっかりとこの目に――」  焼き付けるつもりさ、と削雛さんを見た。  削雛さんを、その姿を見て、僕は思わず言葉を喉元へ、手はボタンから滑らせた。  ブレザーを脱ぎ捨て、亜麻色のセーターも脱いで、シャツを片手で胸元まで引き上げて、見せる白い肌。こんな所で服を脱ぐ可能性を、どれだけの女性が考えるかはさておき、削雛さんは最初からそのつもりで、どうやら腹をくくっていたのだ。  そう、削雛さんは腹をくくっていた。  白い布で、  白い包帯で、  鳩尾から下腹部付近まで、しっかりと腹をくくっていた。 「ほう、なかなか痛々しいじゃないか」  お洒落にしては随分ときつく巻かれた包帯に、血が染みてできた赤錆色。    なによりコーヒーの香りに混じり始めた僅かな腐敗臭が、年頃の女の子が身に纏うにはいささか不似合いなものだった。  
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