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我慢はするけど、もし断ったら一週間くらいはコーヒー抜きにしてもいいはずだ。
そして身空木の一考が終わった。
なぜか片目だけを開いて、
「この依頼は受けてやってもいい、ただし報酬を一つ追加してくれたらの話だ」
「無茶な注文でなければ、別にいいわよ」
「簡単だ、何でもいい、一枚でもいい、前払いで私に絵を描いてくれないか?」
「…………」
「答えは?」
「……わかったわ」
もう一度、両手を広げて背伸びをし、
「どうやら私達の次の活動が決まったようだよ、シュウ」
背筋を再び曲げて、頬杖ついて、身空木の気怠げなGOサインが出た。
「わかった」
身空木が気怠そうに笑い、削雛さんは安心で顔が緩み、僕は明日の献立を考える楽しみを得た。
「ところで、なんで身空木は絵を描いて欲しいんだ?」
と、質問したところで、身空木はいつものようにめいっぱい呆れた表情で僕を見て、
「君な、無知も大概にしたまえよ。芸術学科特異階級保有者、削雛千鶴とくれば音に聞く名じゃないか」
「なら僕は聞きそびれただけだ」
「ならば今ここで心に刻むと良い、いいかい、この女は――」
と、削雛さんを指して言うのだ。
「天才芸術家だよ」
§ § §
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