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ん、いやまてよ。
「僕は女子更衣室にまでついていかないとダメなのか?」
「当たり前じゃないか、狭くて逃げ場のない個室なんて襲撃にはもってこいだよ。よかったな、生JKの生着替えを見放題だぞ、感謝してもらってもいいくらいだよ」
確かに身空木の言っている事は的を得ている。
つまりこれは、そうか、本当になんということでしょう……。
僕は身空木さんに押し込もうとする不躾なフォークを引いた。
「本当にありがとうございます、身空木さん」
そうだよ、僕はなにを今まで悲観的な気分になっていたんだ。
突っ込んでごめんなさい、神様。
そしてありがとう神様!
「……いや、本当に感謝されても困るんだが。君、実はむっつりスケベなのかね?」
「むっつり?」
「普段は無口で、その中ではしっかりと下心をもって悶々としている輩のことだよ」
「僕が無口になるのは男相手だけだよ」
なぜか身空木ががっくりと落胆した。
「ただのがっつりスケベだったか……」
男として正常な心模様だと思うんだけどな、がっつりスケベ。
「それで、削雛さんの身辺調査は終わったのか?」
「種は撒いた。あとは芽が出て実が届くのを待つだけだが、今日の休み時間中に調べた分と事前に調べてきた分も合わせて、大体はもう把握したつもりだよ」
ここは怪談部諜報担当の面目躍如といったところだろう。
「じゃぁ簡単に質問させてもらうけど」
「なんなりとだよ」
「芸術って、何?」
「よりにもよってそこからか……」
今度は頭を抱えられてしまった。
「天才芸術家って言われても、いまいちピンとこないんだ」
「あー、どうせ無駄だろうと解っていながらも一応訪ねておくのだけどね。今まで芸術的な気分になったことは?」
「僕が僕の煎れるコーヒーを芸術的だと思っていいのなら」
「……芸術を言葉で表すのは簡単だ、なぜなら言葉もまた芸術に深く繋がるからだ。それだけ芸術という門は広く、奧は深い」
「もっとわかりやすく」
「芸術は様々な物を写し出す、場所や、時代や、感情もそうだ」
「つまり?」
身空木が、どこか得意げに語る。
「つまり、芸術とは ” 鏡 “ だよ」
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