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そして削雛さんには、こんな細い奴が護衛になるのかと訝られた。
悲しい。だけどごもっともだ。
僕は喧嘩が強いわけでも、何か特別な武術の達人というわけでもない。
精々、自分の身を守るので精一杯なのだ。
なので、僕の役目はせいぜい弾避けか、見張りぐらいのつもりで身空木も推挙したのだろう。
「では、まずはあの女がいない内に話すべき事を話しておこう」
身空木が自分のフォークでAランチの海老フライを突き刺して言う。
「まず話の前提に、あの腹部の傷だが、あれは自傷行為ではない」
ちなみに、現在削雛さんは教師に呼ばれて、まだ食堂に来ていない。
指定されたこの席で昼休み中の合流は一応予定している。
「だから、あれはドッペルゲンガーにやられたんだろ?」
「おいおい、君までなんて事をいうんだね」
持ち上げた海老フライを一囓り。
なにかを囓る姿がこんなにも似合う奴はそういないだろうと思わせる咀嚼を終え、
「この学園に、“怪物”なんてものが本当に存在するわけないだろ?」
何かを蔑ろにするように、何もかもを一呑みにするようにして、身空木は微笑んだ。
「最初から自傷行為をする人には見えなかったけど、その確証は?」
「おや、君がそんな所を疑うとはね。てっきり何も聞かずに信じると思っていたが」
「それは……嘘吐き野郎と一緒にいるせいだ」
言われてみて、これは悪影響だと気がついた。
毒されているのだろうか、この嘘吐きに。
感化されてきているのだろうか、この如何様師に。
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