ドッぺru原画ー ノ 弐

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   削雛さんは、確かに二杯ともしっかりと冷ましてからコーヒーを飲んでいた。  猫舌の可能性はひとまず置いておくとして。    身空木は、あの時、既に情報収集を始めていたのだ。    あのセクハラ行為は、ただの嫌がらせってわけじゃなかったのか。    手にしたフォークを指先で回しながら身空木は続けて言う。 「古い傷も含めて、傷は他にもあった。もし自分の自傷行為を何者かの加害行為として詐り、相手を貶めたいのなら、その部分も含めて報告する方が効果的だ。ましてや嘘をついてまで隠す理由もなければ、犯人を断定的に指定してまで、わざわざ私達に依頼してくる道理も無い。私が自傷行為ではないと言ったから何となく疑ったようだが、これで疑いは晴れたかい?」 「……ある程度は納得したよ、疑って悪かった」  でも、削雛さんの傷は他にもあった。  腹部の刺し傷と切り傷とは、別の傷。  でも、だったら、どうして……。 「だったらどうして他の傷については話をしてくれなかったのだろう。野暮で鈍感な君が今考えているのはそんなところだろ?」 「普通は、そう考えるだろ」 「間違ってはいない、だが“足りない”」 「なにがだよ」 「シュウ、人間は誰だって隠していたい傷ぐらいはあるものなのだよ。知ってほしい傷と、知られたくない傷、それが例え同じ場所にあったとしてもだ。それでも知りたいと思うのなら、削雛千鶴という人間へさらに踏み込むことになるぞ。私達の目的を忘れるな」
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