ドッぺru原画ー ノ 弐

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「だって彼女はクラスの仕事をこなしながら、それでもコンテストにも参加して名だたる賞を次々に獲得してたのよ。  私はその両立ができる程自信なんて到底なかった。  でもコンテストの事を伝えれば、きっと削雛さんはクラスの仕事を一人でやるからって言ってくれると思っていた。  それくらい、私は彼女を信頼していて、彼女は私に優しかったのよ」  僕は頷いて肯定する。 「私は彼女に憧れていたの、ずっとずっと、だから私も彼女と同じようにクラスの仕事をしっかりとこなしながら大会に参加したかった。  だから彼女には何も言わずにテーマの絵を描き始めたわ。  色々悩んで、でも自分の中に浮かんだ自然なイメージを絵にすることにしたわ。  クラスの仕事との両立は大変だったけど、私は描いた、悩みや自分の技術の低さに何度も足を取られながら書き続けて、期限が迫る中、ようやく作品が形になった頃、彼女が来たの」  僕は頷いて話を促す。 「作品作りに行き詰まって、少しだけ学校の仕事を休んだ事があったの。  彼女はそれだけで私の現状を察してくれて、わざわざ私の寮にまで来てくれて、色々と私を励ましてくれたわ。  私の絵を見て、これは素晴らしい絵になると言ってくれたわ。私はその言葉を励みにして、作品を完成させたわ。そしてコンテストに応募したの」  僕は頷いて話を促す。 「結果発表日まで胸の鼓動がうるさくて眠れない日が続いたわ。  緊張で食事が喉を通らない日もあったわ。  そして結果発表の日、朝礼で先生からコンテスト受賞者の発表があったわ。  スクリーンいっぱいに写し出された受賞作品の絵は、間違いなく私の絵だった」  僕は頷いて話を促す。 「私は嬉しくて叫び出しそうな気持を抑えながら、先生が私の名前を呼ぶまで待ったわ。  自分の努力が報われる瞬間が、こんなに嬉しいだなんて思いもしなかったのよ」  僕は頷いて肯定する。 「だけど、私の名前は呼ばれなかった」  
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