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僕は首を傾げて話を促す。
「私のかわりに壇上へ呼び出されたのは、彼女、あの女、削雛千鶴だった」
僕は首を傾げて話を促す。
「私はわけがわからなくなって、思わず、どうしてと叫んでいたわ。そしたら彼女はこっちを向いて笑ったの。
私を励ましたあの笑顔で、私を勇気づけたあの笑顔で、私を見て笑ったのよ」
僕は首を傾げて話を促す。
「私は放課後、すぐさま彼女を問いただしたわ。だけど彼女はそんな私の訴えを知らぬ存ぜぬで突っぱねた。
あれは私の作品だ、私が描いた作品だと。
そこで私はようやく彼女の正体を理解した。彼女は天才でも何でもなかった。
人の皮を被った悪魔だったのよ」
僕は首を振って否定した。
「急には信用してもらえないかもしれない、でも私を信じて、これは全部真実よ。
神に誓ってもいいわ。
そして神様は悪魔を見逃さなかった、私達を見捨ててはいなかったのよ」
僕は首を傾げて話を促す。
「後日、コンテストの審査委員会から賞の剥奪と参加資格の永久停止令が削雛さんに言い渡されたのよ。
その作品が、私の作品の盗作だと公式な発表がされたわ。
私の作品の方が、彼女より先に提出されていたし、絵の具の僅かな乾き具合の差を鑑定師の方が調べてくださったの。
それから、次々に彼女の悪行は暴かれていったのよ」
僕は首を傾げて話を促す。
「彼女の作品は全て“盗作”だったのよ。
もともと自分の作風といった枠に捕らわれないというスタイルそのものが、その姑息な手段を隠すためのものだった。
とても古い作品から、近年の名も無き作品、それらから少しずつ技術を盗み、構図を盗み、色彩を盗み、才能を盗んで、まるで自分の作品のように見せかけ続けていたの。
この行為が芸術という世界をどれだけ冒涜するか、少しでも美の世界を志そうとしている貴女にならわかるわよね」
僕は首を振って否定する。
「いい、これは偉大な先駆者達を蔑ろにする、とても愚かな行為なの」
僕は頷いて話を促す。
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