ドッぺru原画ー ノ 弐

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 唇の先を小さく震わせながら、開いた目を細め、眉をひそめ、「そう、わかったわ」とだけ言い残して、鈴村さんは席を後にした。    僕は黙ったまま、鈴村さんが席を立つのを眺め、見送った。    転科初日の僕に、校内を案内してくれた優しくて、どこか上品な雰囲気をもっていた人。    ばっちりメイクで最近流行りの栗色ゆるふわパーマの美人さん。    クラスでも成績上位者が任命される委員長はやはり多忙だったらしく、僕達の席から離れると、少し早足で去っていった。    彼女は同じくラスの委員長、鈴村…………誰だっけ?  §   §   §     身空木が話を一言に纏めれば、 「今の話には嘘が混じっている。君は信じなくていい」  との事だった。  盗作された、  落とされた、  削雛さんに近づくな。  午後の授業の間で僕なりに彼女が言いたかった事を纏めてみたものの、この程度が限界のようだ。  放課後、終ベルと同時に喧噪が廊下を伝って学内を揺らす。    生徒達が各々の目的に合わせて、学園内、学園街へと拡散する、もっとも騒がしい時間。    僕は喧噪から遠離るように目的地を目指し廊下を歩いていた。     結局、昼食時に削雛さんがテーブルへと来ることはなかった。  何かあったのだろうかと身空木に訪ねれば、「授業の始まりには返ってくるだろう」の言葉通り、削雛さんは授業の始まりには席に戻り、午後の二時間を教室で過ごした。  その後、終ベルと同時に削雛さんへ近寄ると、昼食を抜いてしまったので購買部で飲み物と適当なパンの買い出しを頼まれた。  用をすませてから向かうと待ち合わせ場所を指定して、足早に喧噪へと削雛さんは消え、それに合わせて情報収集に向かおうとしていた身空木を捕まえ、待ち合わせ場所の第二特別美術室の場所を聞き出した。 「行くのはいいが、できるだけ早く行ってやれ」  言われるまでもない。  僕も鞄片手に購買部へと早足で向かった。  
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