ドッぺru原画ー ノ 弐

19/26

55人が本棚に入れています
本棚に追加
/142ページ
 道中、なぜか馴れ馴れしく男が何人か話しかけてきた。  オールスルー、全て無視、僕の男スルースキルは並ではない。  このスキルを使って、今までも幾多の男達を、クラスの半分の人間をスルーしてきたのだ。  僕は難なく購買部に到着し、適当な菓子パンを数個買い込み、購買部のおばちゃんから「やだぁあんたえらいべっぴんやきに、これオマケしちょっちゃらねぇ」とさらにアンパンをオマケしてもらった。  良くわからない言葉だけどナイスです、頼めばビニール袋も二枚くれた、おばちゃんもすごくキュートですよ。 「これは女装も悪くないのかもしれない……」    いやダメだ、これもきっと悪影響。  道中の自販機からホットのブラックコーヒーを二本、ペットボトルのお茶とスポドリを購入。  削雛さんの好みがまだ解らないので、無難なところをチョイスしてビニール袋へ。  もちろん別々の袋に。  そしていざ芸術科旧校舎へ。  旧校舎は新校舎から少し離れている。  賑わう足音が静かになる程度に離れれば、ようやく旧校舎の中だった。  身空木の情報通り、すぐ近くの階段を上り三階へ。渡り廊下を渡り、右手沿い奧、突き当たりが第二特別美術室とのことらしかったが、僕はここにきてすっかり失念していたことに気がつく。 「……騙された」  もっと疑ってかかるべきだったんだ。  身空木が僕にすんなりと情報を渡すわけないのだと。    行き着いた先、そこにはナニもなかった。  廊下の角には教室どころか部屋もなく、ただ上下へと伸びる階段と、その手前にあるトイレくらいなものだった。 「なんてくだらない嘘をつくんだ……」  しかし、これが身空木楓だ。  この場合、身空木に対して怒ることが正常な感情だろうと思う。  だけど、ここで怒っていては身空木という人間と一緒に部活動はできない。  騙された僕も迂闊だった、反省をもって糧にして、そして一つの案を思いついた。  ここに来た理由を作ってしまえばいいのだ。  運良く、ここにはトイレがある。  ふふふ、見誤ったな身空木め。  僕は丁度、催していたのだよ。
/142ページ

最初のコメントを投稿しよう!

55人が本棚に入れています
本棚に追加