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道中、なぜか馴れ馴れしく男が何人か話しかけてきた。
オールスルー、全て無視、僕の男スルースキルは並ではない。
このスキルを使って、今までも幾多の男達を、クラスの半分の人間をスルーしてきたのだ。
僕は難なく購買部に到着し、適当な菓子パンを数個買い込み、購買部のおばちゃんから「やだぁあんたえらいべっぴんやきに、これオマケしちょっちゃらねぇ」とさらにアンパンをオマケしてもらった。
良くわからない言葉だけどナイスです、頼めばビニール袋も二枚くれた、おばちゃんもすごくキュートですよ。
「これは女装も悪くないのかもしれない……」
いやダメだ、これもきっと悪影響。
道中の自販機からホットのブラックコーヒーを二本、ペットボトルのお茶とスポドリを購入。
削雛さんの好みがまだ解らないので、無難なところをチョイスしてビニール袋へ。
もちろん別々の袋に。
そしていざ芸術科旧校舎へ。
旧校舎は新校舎から少し離れている。
賑わう足音が静かになる程度に離れれば、ようやく旧校舎の中だった。
身空木の情報通り、すぐ近くの階段を上り三階へ。渡り廊下を渡り、右手沿い奧、突き当たりが第二特別美術室とのことらしかったが、僕はここにきてすっかり失念していたことに気がつく。
「……騙された」
もっと疑ってかかるべきだったんだ。
身空木が僕にすんなりと情報を渡すわけないのだと。
行き着いた先、そこにはナニもなかった。
廊下の角には教室どころか部屋もなく、ただ上下へと伸びる階段と、その手前にあるトイレくらいなものだった。
「なんてくだらない嘘をつくんだ……」
しかし、これが身空木楓だ。
この場合、身空木に対して怒ることが正常な感情だろうと思う。
だけど、ここで怒っていては身空木という人間と一緒に部活動はできない。
騙された僕も迂闊だった、反省をもって糧にして、そして一つの案を思いついた。
ここに来た理由を作ってしまえばいいのだ。
運良く、ここにはトイレがある。
ふふふ、見誤ったな身空木め。
僕は丁度、催していたのだよ。
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