ドッぺru原画ー ノ 弐

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 思えば、こんな格好をしているのだから、休み時間においそれと男子トイレに入るわけにもいかず、倫理的に女子トイレへと入るわけにもいかず、我慢していたのだ。  これだけ人気がなければ、男子トイレに入っても大丈夫のはずだ。 「ふっ、身空木、まさかお前の嘘に感謝する日が来るとはな」  左右確認、クリア。  前後確認、クリア。  オールクリア。  完全に嘘を逆手にとってやったとトイレへと意気揚々と入った。  入って、入ってしまって、僕は再び身空木の思惑の上だという事を理解する。 「……あー」  意外なことに先客がいたのだ。  それも男が二人、トイレの奧に。  突然入ってきた僕を見て驚いた様子の金髪と茶髪の男。  男子トイレに男がいる事は、別に可笑しいことではない。  未成年でありながら煙草を咥えていることも、校則違反にはなるけど、バレなければオールオッケイが彼等みたいな手合いの合い言葉。  誰だって男はココで用を足すわけで、隠れてイケないことをするのにも最適で、それが彼等にとっての正常な仕組みというものだと理解している。  理解している、だからこそ、男達の間で座る彼女の存在こそが異物だった。  おかげで状況をすんなり理解する。  削雛さんがいたのだ。  乱れた衣服、朱色の頬、唇の端から垂れる鮮やかな赤。  見間違うはずのない、鷲掴みにされて引かれる髪。  はだけた衣服の中に見えるパステルピンクの下着とラズベリーの痣。  茶髪男に後ろから羽交い締めにされて、男子トイレの床に両膝をつく削雛さん。  そして振り返る金髪男と、ニヤつく茶髪男と目があった。
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