ドッぺru原画ー ノ 弐

24/26
前へ
/142ページ
次へ
 なので、 「このがっつりスケベ」  ガツリっと、茶髪の顎へ横薙ぎに食い込んだビニール袋から、そんな感触が伝わってきた。  蹴り飛ばされたボールみたいに顔が個室の方へ身体ごと飛ばされて、便器の角に頭をぶつけ、茶髪男はそのまま動かなくなった。 「うん、確かに女子高生は最強かもしれない」  女装の利便性は充分に解った。  だとしても、やっぱり好きこのんでこんな格好はしたくない。  とりあえず、それが僕の現段階での答えだった。 「大丈夫ですか、削雛さん」  またも呆気にとられている削雛さんに手を差しのばしたところで、互いに目があった。 「……え、あ、うん」 「本当に大丈夫ですか? なにかされましたか?」 「大丈夫って……大丈夫、なの?」  あれ、それは僕が質問したことなのに。って、あぁそうか、しまった。 「あぁすみません、たぶんお茶とかは無事ですけど、パンが潰れちゃいましたね」  再び失念、ってうわぁぐちゃぐちゃだ、クリームとジャムが熾烈な辛味無き戦いを繰り広げちゃってる、こし餡餡と添加を狙う純正小豆チームが混ざっての三つ巴の戦いが始まりそうになっている。  パンの袋は左に手にでも持ち替えておくべきだった。  あのおばちゃんまだいるだろうか……。 「そんなことじゃ、なくて……こいつらまさか死んで」 「あぁ大丈夫だ、死んではいないよ、ふふ、こいつは前歯が三本へし折れているがね」  振り返ればしゃがみ込んだ身空木が金髪男の瞼を摘んで、手首を掴んで脈を測っていた。 「いや、なんでしれっといるんだよ、身空木」  なぜか身空木が居た。  神出鬼没を旨としているのは知っているけど、いくら何でも唐突すぎだ。  
/142ページ

最初のコメントを投稿しよう!

55人が本棚に入れています
本棚に追加