55人が本棚に入れています
本棚に追加
「一番奥の個室にもう一人いる」
「なんだ、ではそいつ“から”使うとしよう。こいつはその隣にでも入れておいてくれ」
ビニール袋を僕からひったくると、削雛さんの横を通り過ぎて、奧の小部屋へと消えていった。
すぐさま扉が閉められ、中からガムテープが引かれる音がしばらく聞こえてから、金属が擦れる音がガチャガチャ。
中で何が行われているのか、僕には想像できない、しない、したくない。
とりあえず絶対にワクワクするような工作はしていないと思う。
言われた通り、金髪男を隣の個室に押し込んで扉を閉めた。
少しして、
「おい君、大丈夫かね、そろそろ起きたまへ」
隣から肌を何度か引っぱたく音がする。
「……あ、だ、つぅ、あ、ああ、なんだよ、くそ、あた、いてぇ……え?」
どうやら茶髪男は目を覚ましたようだった。
「やぁおはよう、君に少々聞きたい事があってね。さて気分はどうだね?」
「なんだよこれ、な、なんだよこれ! おい、おい! なんだよこれ!」
「あまり力まない事をオススメするよ。安物なんでね、あんまり力をいれると、そのまま中で割れてしまうかもしれない。それと君のポケットにあったライターを借りているよ、最初はこれにすべきか、それともこっちのアルコールランプにするか、はたまたバーナーにするかを悩んでいる最中なんだが」
ガラスを軽く叩くような短い音がして、それに合わせて茶髪男が喉を引き攣らせた。
「――さて、状況を正しく理解してくれただろうか?」
僕は理解なんてしたくない。
これ以上は色々と危ないと判断して、僕は削雛さんを無理矢理引き起こし、男子トイレを出ることにする。背後からガスバーナーが着火する音と、男の叫び声が僅かに聞こえたが、水の流れる音に掻き消され、僕は思わず背筋が震えた。
「…………あいつ、やっぱり人の皮を被った悪魔だわ」
想像しちゃいけませんよ、削雛さん。
だけど僕もそう思います、削雛さん。
§ § §
最初のコメントを投稿しよう!