ドッペru原画ー ノ 参

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「まずはその委員長の話だ。かなり意図的に触れ回っているようだが、その真偽を確かにしたい」 「あんた、そもそも私の言葉が信じられるの?」 「人の言葉はどんな時も嘘と隣合わせだ。だが話は多面的に、事を多元的に捉えれば、事実に符合しない部分が出てくる、そこに嘘があると解れば、私はそれでいいのだよ」 「どの部分に矛盾が生じるか、それを知りたいわけね」 「わかってるじゃないか。我が家のケダモノよりは頭が回りそうだと誉めておこう」 「……あんた、その内、後ろから刺されるわよ?」  なんで、こんな会話の合間に僕が貶められないといけないんだろ。  そしてたぶん、身空木を後ろから刺すとしたら、それも僕なのだろうけど。 「では最初の質問だ。お前はコンテストの参加作品をどこで描いていた?」 「ここよ」 「その際、製作途中の絵はここに置いてあったのか」 「持って帰る日もあったし、ここに置いて帰った日もあったわ、もちろん施錠してね」 「鍵の管理はお前が個人でしてるのか」 「この教室は特異階級の特典の一つで貰ったのよ。鍵も私が一年の頃から管理してるわ」  特異階級に与えられる特権の中で、もっとも大きな物がこれだと僕は思う。  特異階級保有者には、どれでも好きな教室を一つだけ選んで、自分の好きに使ってもいいというものがある。  驚く事に制限なく、際限なく、どんな教室でもだ。  過去の特異階級保有者の中には、学科に一つしかない体育館を指定した人物がいたらしい。  そのせいで、普通授業が全て外で行う事になったとも、そのためだけに急遽体育館を新設しただの、眉唾な話まである。 「当然、生徒により勝手な貸し出しもできない、と」 「そうよ、当たり前じゃない」  ちなみに、身空木楓という特異階級保有者は普通科第六旧校舎屋上にある物置部屋を指定したという噂がある。  これは嘘だと思う、むしろ嘘であって欲しかった。 「そうか、では次の質問だ。お前が委員長と仲が良かったというのは本当か?」  これには少し、答えづらそうに削雛さんは頷いた。 「…………本当よ」  ならば鈴村さんの話と合致する。  
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