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「委員長が作品作りに困窮していると知って、寮にまで励ましに行ったのは本当か?」
「……本当よ」
合致。
「その時、彼女の作業場に入ったというのは?」
「本当よ」
合致。
「お前は本当に委員長の作品を見て、“盗作”したのか?」
その言葉に、削雛さんは、
「それは嘘よ」
矛盾(エラー)を出して、手を止めた。
「私は鈴村から盗作なんてしていない。コンテストに出てることだって知らなかったわ」
「しかし、できあがった作品は委員長と同じ絵をしていたのだろ」
「そうよ。でも私は確かに私の心の中にある物を描いた。でも鈴村が描いたあの油絵は構図も、筆遣いも、絵の具の種類も、色の乗せ方も、選び方も、確かに私そっくりだった。他人が見たら、まるっきり同じ絵と思うのは仕方ないのもわかる。だけど、鈴村の絵は、私の絵じゃない。私の絵は、鈴村の絵じゃない、例え形が一緒でも、私は別々の作品だと思ってる」
「ほう、鈴村が盗作したとは思わないのか?」
嫌な笑みを浮かべる身空木に、削雛さんはハッキリと言った。
「無理よ、だって私、“鈴村に絵を見せてないんだもの”」
言ったのだ。
それが意味するところを、わかっているのだろうか……。
「くく、正直者め、これだから私とはそりが合わないんだ」
「同感、私も嘘が嫌いなのよ」
「だが、そんな正直な答えが裏目に出てクラスの連中からも、公正な委員会すらもお前を黒と判定した」
「……不服ながらね」
「それを決定付けたのが、作品の完成時期とコンテストへの投稿日だった。お前はコンテストへの参加はいつから決めて、いつから作業していたんだ?」
「コンテストへの参加は担任からの勧めがあったのよ。メジャーなコンテストだけじゃなくて、こういった所にも参加してみたらどうだろうかって。毎年風変わりなテーマで募集をかけるコンテストで、私も少し気になってたし、忙しかったけど参加することをその場で伝えて、締め切り日を聞いて思わず呆れたわ。油絵だったから、その日の内に急いで作品に取りかかったのよ」
「作業期間は?」
「二週間、締め切り直前だったわ」
「つまり、ほぼ締め切り二週間前に作業を始めたというわけ、か……」
「油絵って二週間で描けるものなんですか?」
ふと、気になって口を挟んでしまった。
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