ドッペru原画ー ノ 参

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「双子とはいえ、生まれ出る子宮(でぐち)は狭き一つだ」 「男はどちらが姉で、どちらが妹か、それだけで傍えを選んだ」 「やがて男の愛は、少女達の愛を蝕んだ」 「二人だった世界に現れた、片方だけを選ぶ愛」 「片方だけを、特別だと囁く愛」 「男の愛によって生まれた、僅か数分の差違が、少女達の愛を裂いた」 「傍えは男の存在を憎んだ。そしてある日の晩、傍えは男を呼び出し」 「男を殺した」 「走って逃げるので脚を潰し」 「声をあげるので喉を潰し」 「涙を流すので目を潰し」 「命を乞うので心臓を潰した」 「遺体は学園内のどこかにある巨大な鏡の裏へと隠したそうだ」 「傍えは、その事を傍えに伝えた」 「これで私達はお互いだけを思い合っていられるのだと」 「私は貴女、貴女は私」 「私は貴女を愛してる」 「その日、その夜」 「傍えは、傍えを殺した」 「遺体は、男を隠した鏡の対、合わせ鏡の裏へと隠した」 「男がずっと淋しくないように」 「男がずっと彼女を忘れないように」 「男がずっと、私を特別だと思ってくれるように」 「その日、その朝」 「最後の一人は、校舎の屋上から飛び降り、その命を絶った」 「それからだ、学内に自らの傍えを求め彷徨う、少女の姿を見かけるようになったのは」 「もし彼女に出会ったら、絶対にその正面に立ってはならない」 「もし向き合えば、その姿を写し取られてしまうだろう」 「瓜二つとなった彼女に鏡の中へと連れ込まれ、そして愛を囁かれる」 「私は貴女、貴女は私」 「私は貴女、貴女は私」 「私は貴女を、愛してる」 「だから貴女も、私を愛してる」  §    §    §
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