ドッペru原画ー ノ 参

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  §   §   §  新校舎一階の美術室から廊下端の階段を上った先、二階の渡り廊下に白津先生はいた。  身空木が言った通り、この先にある職員室へと向かう道中なのだろう。  まだまばらながら生徒達の足音や声が聞こえる廊下の途中で、その背中を呼び止めた。 「おや、どうしたんだい?」  振り返る姿に優しげな笑顔。  さて、コレとできるだけ事を荒立てないように質問するにはどうするか。  僕としては男と話なんてしたくないが、身空木の命令とあっては仕方ない。 「あ、あの、白津先生、お尋ねしたい事があります」  目線を合わせないように斜め下を向きながら、勇気を振り絞るためにスカートの裾なんかを握り締めて、そして聞くのだ。 「削雛さんの事、先生はどう思ってるんですか」    限界はすぐに来る。 「削雛さんと……どんな関係なんですか」  できるだけ手短に、手早く、単刀直入に、聞いてしまわなければならない。 「……え? どう思ってるか、かい?」  なんで白津先生の方が困ったような、恥ずかしそうな顔してるんだろう。 「その、どうしてそんな事が気になるんだい?」  そんなの僕が聞きたいくらいなんです。 「ど、どうしても、です」 「そうか……はは、まいったな」  まいってるのは僕もです。  あれ、どうしてちょっと顔が赤いんですか? 「その、削雛君とは何でもないんだ、教師と生徒の関係だと僕は思っているから、その、だから安心してもらって大丈夫だよ」  なにを当たり前の事を言ってるんだろうか、この人。 「彼女の素生は色々と特別でね。今は気を遣って上げないといけない時期なんだよ」 「それは、鈴村さんとの一件のことで、ですよね?」  訪ねれば、あからさまに驚いた、と白津先生は目を開いてから、表情を曇らせた。 「それは、誰から聞いたんだい?」 「鈴村さん本人から、昼休みに」 「そうか、まだ彼女はそんな事をしているのか……本当に困った子だ」 「その、よければその辺りの事情も聞かせてもらってもいいですか?」 「それは、教師という立場では話す事ができないんだ」 「だったら一人の男として話を聞かせてください」  なぜか、再びあからさまに驚かれた。
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