ドッペru原画ー ノ 参

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「たとえ後から生まれ、たとえ形が似ていても、先に生まれた物を超える力をもった作品は存在する。僕はね、そんな作品にこそ、本当の価値と、真のオリジナリティーという物を、認めるべきだと思うんだ」  先に生まれた物を超える、個性。  例えば僕が、身空木の姿をそっくりそのまま絵にしても、後からまったく同じ絵を描いた削雛さんの方が本物だと認められるのだろうと、思った。  僕は、あんなに美しく身空木を描けない。  それは恐らく、僕が身空木と見つめ合うことができないからだ。 「だけど鈴村君達は、先に生まれたという、たったその一点に絞って、彼女に報復し始めたんだ」    目の前で、大の大人の拳が、音を立てて絞り込まれる。   「盗作された事に対しての怒りは正当な物だけど、彼女達はやり過ぎたんだ。最初はクラスの数名が鈴村君の発案で、削雛君の作品全てを調べに調べだした。調べ尽くした後、彼女達はその作品を他者の過去の作品と比較しながら細かく批評、いや……批難し始めたんだ。過去の作品から、徹底的に類似点を指摘し、削雛君からオリジナルという定義を潰しにかかったんだ」  何かを握りつぶすかのように、強く、強く、その拳が小さく震えだした。 「しかし削雛君は、なぜか反論しなかった。でもそれがかえって彼女達の嗜虐心を肥大させた。その内、クラスの面々が面白がって徐々に参加しはじめた。“この作品は彼のパクリ”だ、この作品は彼奴の作品に似ている、この作品は彼女が考えていたものだ、これは私達の作品を作り替えただけだ。どれもこれも、ただの言いがかりやこじつけと言った方がいいくらい、酷いものだったよ。彼女の才能を認める一方で、それは嫉妬の対象にもなり得たんだろう。そして……削雛君はついに作品作りを止めてしまった」  そしてここで、僕の理解も、止まってしまった。
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