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「それからの彼女は酷い荒れようだったんだ。彼女はアトリエに閉じ籠もって、誰も寄せ付けないようになってしまった。信じていたクラスメイトに追い込まれて、追いやられて、そして最後には、“あんな怪談話にまで”彼女を当て付けるようになった」
解らない。
「なにがドッペルゲンガーだ! くだらない! 僕は鈴村君から突き落とされたという話を聞いた時、当然の報いだと言ってやりたかったよ! 教師という立場でなければ、世間体なんて無視して削雛君を一方的に庇護してしまいたいと思ったよ!」
どうしてだ。
“ どうでもいいじゃないか、そんなこと ”
どうしてそんなに、自分が他人と似ている事が許せないのだろうか。
どうしてそんなに、他人と他人が似ている事を許せないのだろうか。
あぁ、
あぁ、
“ オナカガスイテ キモチワルイ ”
分からない。
「……すまないね、幻滅させたと思う。僕は教師として失格な人間なんだ」
どうしてだ。
わからない。
僕が、創造する人間の気持ちが分からないから?
僕が、創作する人間の気持ちが分からないから?
まただ、また何かが足りないのだ。
「でも本当によかったよ、また彼女が作品を作る気になってくれて」
彼女は似せたくて、偽ているわけでもないのに。
「それも、君のおかげなのかな?」
思い、悩んで、気がついたら、こんな形になっていただけなのに。
「君達みたいな綺麗な顔立ちなら、きっと彼女のモデルにもなれるよ」
そうやって、削雛さんは巣へと追いやられてしまった。
閉じ籠もってしまった。
もう、誰の卵も見たくなくて。
もう、誰にも卵を奪われたくなくて。
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