ドッペru原画ー ノ 参

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「……わかりました。お話、ありがとうございました」  そして、卵すら暖めることができなくなってしまったら。  そして、卵すら生むことができなくなったら。  やがては巣にいることすら、その理由を失ってしまったら。  きっと落ちるところまで、彼女は落ちるのだ。  その行き先を、僕は知っている。  そこは暗い池の底だ。  そこでは、やがて魚の餌になるだけなのだ。  傷付けられて、腹を裂かれて、骨を砕かれて、血を流して、誰かに呑まれるだけだ。  なら、だれが彼女を護ればいいのだろう。 「え、あ、あぁ、もういいのかい?」  まただ、また何かが胸の奥にたまっていく感覚がする。 「失礼、します……」  蠢き出す、空腹感情。  湯飲みの中身を流し込んで、道を熱で焼いて、空腹が昇ってくるのを押さえ付ける。  そのまま、僕は生徒指導室から逃げるように飛び出した。  走って、離れて、探して、見つけた冷水機に顔を押し付けるようにして、水を飲んだ。  ガブガブと、ガフガフと、まるでケダモノのように、空っぽの胃袋に水を流し込み続けた。  そのまま、五分だろうか、十分だろうか、それとも数十秒かもしれない時間、僕は喉を鳴らし続けて、空腹感が消えるまで水を飲み続けた。  空腹が和らいだところで顔を上げて、口を裾で拭った。  女子としては、きっと行儀の悪い行為なのだろうと思いながらも、気遣うほどの余裕はなかった。 「……帰ろう」  とりあえず、今聞いたことを、できるだけ身空木に話してしまおう。  そしたら、少しだけ胸が楽になるような気がするのだ。  時間も無いので、再び早足でもと来た道を探して廊下を進む。  まだ記憶が新しい内に、逆に辿って歩いて、曲がり角。  現れた階段を半分降りた踊り場で、僕は意外な奴に出くわした。 「――……身空木」  身空木がいたのだ。
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