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水の底に、深い底に、揺らめく黒。
口のない魚。
口のない魚は泡方の夢を見る。
何も得ることはできないまま、呼吸だけを繰り返して。
どうして生まれてきたのか。
口のない魚は考える。
何も得ることができないまま、心臓だけを動かして。
口のない魚は思う。
どうしてこんな形をして生まれたのか。
どれだけ欲しても、追い求めても、
誰も食えず、千切れず、噛み砕けず、殺めることすら、許されず。
ただ飢えて、餓えて、考える。
どうして、死ぬことができないのだろうか。
自分の喉元を喰い千切る事もできず、
息を止める事もできず、
口のない魚は泡方の夢を見る。
夢を見て、考えて、声を聞いた。
“ スキ キライ ハ イケマセン ”
§ § §
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