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§ § §
「君、起きたまへよ」
起きた。
爽やかと呼ぶのはほど遠い目覚めだけど、どうやら僕は起きたようだった。
今世紀最大、宇宙誕生来最悪の夢をみた気分。
それでも、とりあえず、生きてはいるようだ。
意識と認識が溶解してドロドロになったコールタールみたいに眼球の空洞を満たしている。
重い。
背中が冷たい。
何かにもたれかかってる?
視界がハッキリとしない。
暗い。
暗闇を払いのけようと深呼吸、と同時に目を深く瞑って、吐き出すのと同時に開いた。
目の前に、身空木がいた。
膝を曲げて僕を不思議そうに見つめている。
このまま喰われて死ぬのだろうかと、そんな事を考えてしまった。
いや、考えようとして意識が頭に巡った瞬間、後頭部から突き出てきた疼痛に記憶が前頭葉まで押し込まれて、思い出す。
「やっと起きたか。なぜ君がこんな所で気絶しているんだね?」
何をしてる……何をしてる?
「う、っつうう、このっ」
咄嗟に手が出ていた。
「みギャっ!?」
拳に力が入らなかったので、開いた拳で掌底する形で、身空木の額を捉えた。
格好からして、ふんばりが効かなかったのか、不細工な叫び声と共に身空木はあっさりと後方へと倒れた。
「って、いきなりなにすんじゃくらぁ!」
が、そのままバネ仕掛けのように跳ねて起き上がる。
僕も合わせて立ち上がり、あからさまな憤怒の表情と向き合った。
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