ドッペru原画ー ノ 肆

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 やはり多忙な委員長は朝が早いのだろう。    お仕事ご苦労様ですと挨拶をすると、なぜか僕を冷たく見据えて、僕の机にこんな事をしたのは削雛さんだと言った。    その姿を隠れ見たというのだ。    しかし、見間違いや勘違いは誰にだってある。    僕は、削雛さんが昨日の夕方から有馬(身空木)と一緒にずっと二人で作品を作っていると、それを僕も見ていたと、鈴村さんの見間違いを正してあげた。  すると嘲笑気味に、 『じゃあ、あれは削雛さんのドッペルゲンガーだったのかもしれないわね』  と、自ら否定していたはずのドッペルゲンガーの存在をあっさりと認めるような発言をした。  だけど、昨日の事もある。色々と考えながらも掃除道具の片付けを終え、新しい机を貸し出して貰うにはどうすればいいのかを鈴村さんに訪ね、授業開始までには事無くを得た。  まったく、許せないのはドッペルゲンガーだ。  この清掃のお礼は、昨日の事も含め、しっかりとしてやらねばならないだろう。  結局、今日の授業は口に未だ残る感触が邪魔をして、頭に入ってこなかった。  苦しみに悶えながら、昼時を迎えた。  昼休み、二人は再び美術室に籠もって、昼食も取らずに絵を完成させた。  できあがった品を見て、その出来映えに、完成度に、芸術というものの底深さを感じたりした、その後。  午後の授業をサボると名言した身空木は、再集合の時間と場所だけを指定して、校内へと出来上がった作品を片手に走って消えていった。  やはり、やたらと闘志を滾(たぎ)らせているように見えた。  再集合時間は夜八半時、当然ながら一般生徒は既に立入禁止時間になり、校舎の出入り口の殆どは施錠されるが、もうそこから先のヤリ口はいつも通りに身空木任せだ。  というわけで、僕と削雛さんは、放課後、楽しいお茶会へと出かけた。
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