ドッペru原画ー ノ 肆

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 お茶会、ご休憩、もういっそのことデートと言っても過言ではない気がする。  よし、勝手ながら、これをデートと呼称しよう。  思い出したくもなければ、話したくもない昨日の口直しも兼ねて、以前に教えて欲しいと頼まれたカフェで時間を潰さないかと提案、快諾とテンポ良く流れて進んで、いざ喫茶店へ。  行き付けの喫茶店は御影ノ学園街でも知る人ぞ知る老舗の名店だが、あまり知る人がいないというのが、もっぱらマスターの悩みごとらしい。  しかし、静かにゆっくりする場所としては、ここ以上の場所もない。  本日も年間契約されたのだろう閑古鳥が鳴く喫茶店は、心地よい静けさと、コーヒーの豊潤な香りと、体毛らしき物が一本もない頭部にサングラスを掛けた筋骨隆々のマスターが、笑顔でお出迎え。  一礼すませて入店し、すぐに店奧は端の席を陣取る。  コーヒーを注文するさい、削雛さんにはアイスの方を勧めたが、美味しいコーヒーはホットで飲むべきだと意気投合。  そのままコーヒー談義に花を咲かせ、世間話を挟んだところで、ホットコーヒーが二つやってきた。  やはり職人の煎れたコーヒーは一味違うと僕が言うと、あんたのコーヒーも充分美味しいわよと削雛さん。  じゃぁ自宅まで煎れにいきましょうかと冗談半分に言うと、さすがにそれは恥ずかしいから、また今度でと削雛さん。  ここはデザートも美味しいんですよと僕が言うと、自分は甘すぎる物は苦手だと再び意気投合な削雛さん。  ならばと、チーズケーキとバターケーキを頼んで、また世間話。  あれ、なんだろう、かつてここまで、穏やかな午後の一時があっただろうか。  いいのだろうか、こんな幸せ。  僕は、幸せになっても、いいんですか? 神様。  しかし、そんな幸せが長く続くわけもなかった。
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