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「カルロス」
同じ輸送機に乗っているアップルボーイが話しかけてきた。
彼とは訓練施設にて出会ったいわゆる同僚だ。元々友達をつくるのが何故か上手くないオレにとっては大切な友人だ。
アップルボーイは彼のレイヴンとして使う偽名(レイヴンネーム)であり、訓練時からレイヴンネームで呼び合う事になっている。そしてさっき呼ばれたカルロスとはオレのレイヴンネームである。施設に居たとき肉親が誰もいないため名前もわからなかったらしい。そこでその施設において付けられたのが「カルロス・ローター」という名前だった。本名がわからないためオレはそのまま名をレイヴンネームとして登録したわけだ。
「なんだ?」
オレは返事をした。
「いよいよですね」
「ああ、遂に来たな」
「お互い死なないようにしましょう」
「縁起でも無いって…」
多少の談話をしつつ、目的地につくまでしばらく待つ。
数十分後、スピーカーから低い声が響く。
「まもなくだ。搭乗を開始しろ」
試験官だ。
「じゃあ…行くか」
「そうですね」
オレ達は真下の格納庫に向けて歩き出した。
『システム 通常モード 起動します』
訓練時にも何度も聞いた合成音声が流れる。
「レイヴン…」
オレは呟いた。この称号に合う存在になりえるのか。そう思いながら軽く目を閉じた。
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