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ピピピピッ
ピピピピッ
ピピッ
携帯のアラーム音が聞こえたので、ボタンを押して止めた。そして、また布団にもぐりこむ。
この携帯のアラームが役立ったことは、ほとんどないと思う。眠りに落ちる直前くらいで、くぐもった声が聞こえた。
「葵ー!起きなさーい!」
声は階下からで母のものだった。その声でようやく目覚める。
前に母の声でも目を覚まさなかったことがあったが、部屋に侵入され、しかも大音量でしゃべりかけてくるという、健全な男子高校生でも女子高生でも嫌がることをされたのだ。それ以来は母の侵入の前に起きるようにしている。
体を起こして、自分の綺麗でも汚いでもない部屋をぼーっと眺める。
………おっと、やばい。座ったまま、また寝るところだった。
自分の今出せる最速で、制服を着てリビングへ行く。途中、妹が自分の三倍くらいの速度で、リビングから玄関に歩いていくのを見た。
なんだ、あいつ。俺の最速の三倍とかもはや人間じゃない。
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