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この後、帰り道で起こることも知らずに。
「………。」
「小娘どうした?」
「………いざってなると複雑というか。
これから死ぬって分かっていて見送るのは。
敵なのに……。」
「最初に始末とか言ってた奴が、今更かよ。」
隣に並ぶ土方はもはや呆れを越えたような視線と言葉で返す。
「……うぅ、だって師匠が恋しさあまりに。
それに未だに私、師匠に会ってないし。」
師匠はもう御陵衛士から逃走しているはずなんだけど、会えてないのが現状。
会えるのはやっぱり、この事件が終わってからかなぁ……。
「それについてはもう少しの辛抱さ。
さてーと、あとは報告待ちだ………って言いたい所だが、そうもいかねぇーみたいだ。」
「ぐおっ!」
一瞬だった。
片手で私の体を飛ばし、刀を紅く染めたのは。
土方さんの足下には動かぬ人が転がり、私は尻餅をついたまま呆然とした。
「この人………。」
「御陵衛士の奴だな。
面(ツラ)に覚えがある。
目的は………小娘か。」
土方さんは突き飛ばされた反動で尻餅をついた私を庇うように立ち位置をかえる。
そこには数人の御陵衛士が。
「その娘を渡して貰おう。」
「残念だが、このじゃじゃ馬小娘は渡す訳にはいかねぇーよ。」
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