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「渡す気がないなら奪うまで。」
走り出した御陵衛士達の手には鋭利な刀。
それが一斉に私と土方さんに向かう。
「雑魚どもが。」
対し、無数の刀を綺麗に刀で受け流す土方さん。
受け止めれば、その隙に手の空いた御陵衛士が後ろに回り、私を捕らえると思っているんだろう。
ともあれ、数的には不利だ。
私も参戦しないと。
万が一に備えて用意した短刀を懐からそっと取り出す。
出来ればやりたくないけど、短刀で腕を多少傷つけて、隙をつき逃げれば………。
覚悟を決めて鞘を抜こうと手をかければ手元から短刀が消える。
それを最後に視界が闇へと落とされる。
「秋山さんが戦う必要はない。
だから、今はこのまま動かないでくれ。」
近藤さん?
近藤さんは伊東甲子太郎が帰った後、私と土方さんを置いて別屋の奥へ下がっていたけど異変に気づいて駆けつけてくれたようだ。
視界は塞がれても聴力は機能しているから、それは分かった。
分かったけど……。
「ぎえぇぇぇぇ!?」
ざしゅっ。
ぐちゃ。
「ぎゃああぁぁぁ!!」
「ぐはぁっ。」
どすっ。
生々しい音と悲鳴。
まさか土方さんが全部…………。
「近藤さん。
終わりました。」
「総司!
俺まで斬ろうとしやがったな!!」
「斬りませんって。
第一、これぐらいで手こずらないで下さいよ土方さん。」
違う。
沖田さんだ、これは。
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