プロローグ

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スズとサナ、幼馴染である二人には秘密があった。 子供のときから二人だけが知っている原っぱがあり、幼いときは毎日のようにそこで遊んでいた。 その場所は何年経っても二人以外、大人も周りの子供たちも知らないところで、いつしかそこが二人にとって特別な場所になっていった。 二人だけの場所となったそこは、決して誰にも言わないと互いに約束しあった。 そこが特別なのにはもう一つ理由があった。 二人がまだ小学生になる前だった。あるとき、フラッと白い子猫がやってくるようになった。 その小さな子猫を二人はとても可愛がっていた。 しばらくするといなくなるのだが、またしばらくするといつの間にかその子猫はそこにいた。 不思議なのは、二人が高校生になった現在も、その猫は子猫の姿であるということだった。 幼かった二人は、しばらくそのことを不思議に思うことはなかった。 けれど、成長するにつれその子猫が年をとらないことが不思議でたまらなくなった。 実は幽霊なのではないのかと疑ったときもあったのだが、その子猫は普通に触れるし抱っこすることもできた。 なぜ成長しないのか暴きたい気持ちはあったのだが、二人の姿を見つけると「ニャーン」とかわいらしい声をあげて駆け寄り甘える子猫を見るたびに、二人は成長しない子猫の不思議がどうでもよくなっていった。 こんなに可愛いのだ。子猫のままでいいじゃないか。という結論に至ったのだった。 高校生になった今でも、二人は暇さえあればその子猫がいる原っぱへとよく行っていた。 子猫にはお気に入りの場所があり、原っぱの端のほうの、町全体がよく見える場所だった。たいていそこで寝ているのだった。 いつの間にかいなくなっていたりもするのだが、いないときは原っぱでも街中でも決してその姿を見ることはなく、それは二人にとっても不思議だった。 つまり、原っぱでしかその子猫には会えないし、そこ以外でその子猫を見ることはないのだった。
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