サヨナラの記憶

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遠く 遠く 聞こえる君の声 真冬に香る桜のそれは きっと全て幻でしょうね 初めての君の隣 どんなことでも胸高鳴った プラスチックの三角定規が ふたり繋ぐ橋だったね 君が口ずさむ歌 いつしか僕も 遥か 遥か 遠くで微笑む君 さよなら言うには遠すぎるから 笑って そして『好きだよ』って そう叫んだんだよ 予報どおりに雨が降って 桜を散らしてしまうみたい 真っ白なスニーカー履いて 二人で見とれた桜の木 ビニール傘開いて見に行こうかと思うんだ 走って 走って 息が上がってたから 君にさよなら言えなかったんだよ 言葉なんてちっぽけだって なんとなくそう思ったから 君の手をつかんだんだ 笑って 笑って 君の優しい声で 泣いていることに気づいたよ 僕の頬を撫でる君の瞳が 震えていたから 僕は哭いたよ 『イヤだよ イヤだよ 行かないでよ』 君がそう言って涙流すから 今度は僕がその頬をぬぐうよ やっぱり『サヨナラ』は違うと思うから 涙の残る頬にくちづけた 桜の香りの中で わずかな永遠を君と
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