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エスの声は、ずっと聞こえていた。
道案内をしてくれているのだ。
ルーアが思いきりよく馬を走らせることができているのは、エスのお陰と言っていい。
『あの霧に飲み込まれると、距離や方向だけでなく、時間の把握も難しくなる。全ての感覚を狂わされてしまう』
「……みんなは?」
『霧の中にいるようだ。分断されてね』
「今回のお前は、いちいち情報を渡すのが遅い!」
ゲーデの能力がわかっていれば、相応の対策を事前に取れていたかもしれない。
『私の力不足は認めよう。だが、遅れたのは情報を渡すことではなく、得ることだ。情報戦で、後手に回らされている。相手がクロイツだということを、理解してもらいたいものだが』
「わかってるけどよ……」
馬上で、溜息を吐く。
「それで、俺はどうすればいい? 感覚を狂わせるって言ったな。迂闊に突っ込むわけにもいかないか」
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