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「……君、いいの?」
奴のその一言とほぼ同時に、
何かが引きちぎられたような音が響いた。
「な、何なの今の……?
ぶちっ、って言わなかっ…………って」
咄嗟に上げた顔を奴に戻すと
つまらなそうにカップを持ち上げ
「あーあ」と呟いていた。
「ねえ、何が起きたの? 今!」
「何、って……つまらないことだよ」
「つまらない、って……
はぐらかさないでよ。私、これ以上は
厄介なことになりたくないのに……」
本当につまらなそうに
「そう、ぼやかれてもねえ」と奴は言った。
それからカップを(多分)地面に置き、
再び口を開いた。
「名前が逃げ出してしまったんだから、
仕方ない」
「な、名前……? 何言ってるの……?
私には名前くらいちゃんと」
「そうじゃない」と言って奴は頭を掻く。
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