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「いい加減にしてよ」
どんっという鈍い音をたてながら
母さんの鞄が学校の壁にぶつけられた。
──嫌な音。
私はそれだけを感じた。
「ひなは、しつこい」
何度も、繰り返された、言葉。
「ひなは」
「ひなは」
「ひなは」
自分の名前の価値なんて、意味なんて、
私には解らなかった。
「・・・あなたは本当に──
──よく解らない子ね」
……ふうん。
解らないんだ。
ぼんやりとそれだけ思って、
私はさっき職員室から勝手に盗った鍵を
手に階段を駆け上がった。
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