2人が本棚に入れています
本棚に追加
「ひな!」
下から制止をしようとする声が響いた。
「……私はそんな名前じゃない」
ぼそっと、私は言った。
え?と、戸惑うような声が
聞こえた気がしたが
それは多分
認識しようとした私の言葉が私の足音で
かき消されたからだろう。
なんて考えている間にも
ぐんぐん階数は上がっていく。
「やっと、三階……」
駆け上がった、と言っても
私には体力があまり無かったのだ。
「まあ、無茶したって
これで“最後”なんだから問題ないよね」
自嘲的に笑いながら
私はまた階段を上がる。
これで、最後の一段。
その階段を上がり、
目の前の引き戸の鍵穴に鍵をさす。
最初のコメントを投稿しよう!