落ちる 落ちる

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  「ひな!」 下から制止をしようとする声が響いた。 「……私はそんな名前じゃない」 ぼそっと、私は言った。 え?と、戸惑うような声が 聞こえた気がしたが それは多分 認識しようとした私の言葉が私の足音で かき消されたからだろう。 なんて考えている間にも ぐんぐん階数は上がっていく。 「やっと、三階……」 駆け上がった、と言っても 私には体力があまり無かったのだ。 「まあ、無茶したって これで“最後”なんだから問題ないよね」 自嘲的に笑いながら 私はまた階段を上がる。 これで、最後の一段。 その階段を上がり、 目の前の引き戸の鍵穴に鍵をさす。  
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