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風が気持ちいい
そう思った。
──こんな風を、
昔はいつも母さんと二人で──
「くだらない」
ぼそ、と呟いた頃には
風なんて気持ち良く感じなくなっていた
こうやって、私はいつも
私の感じた「良さ」を私の「考え」で
打ち消してく。
そう母さんが言ってた。
「よ・・・い、しょっと」
フェンスを無理やりよじ登り、
有刺鉄線で手を切りながらも
フェンスの外の狭いスペースに降りる
心なしか、風が強くなってきた気がする
まあどうせ
いつもの勘違いなんだろうけど。
深呼吸を数回繰り返し、
まっすぐに前を向く。
「バイバイ、くそったれの世界」
ニヒルに笑って地面を蹴った。
背後から
「ひな!」
そう叫ぶ声が聞こえたような気がしたけど
まあどうせいつもの勘違いだって
そういって耳をふさいだ。
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