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―――今でも鮮明に思い出させられる。最愛になった叔母の死の直前。―――泣き叫ぶ叔父。呼び止めようとする祖父母。
「―――美奈子、私をおいていくのか?
こんなにやつれてしまって…
医者なのに、お前を助けてやれなくてすまない
辛い思いばかりさせてしまったね…
美奈子…、美奈子ぉ……」
病室に叔父の辛そうな声が響き渡る。
―――抗がん剤を最初摂取したがらなかったのも含め、若すぎたことから、叔母のガンの進行律は著しく、一年弱で、叔母の様態は悪化し、今、危篤状態を迎えていた。
―――崖山から飛び降り、幸い命は助かったものの、靭帯を損傷し、下半身付随になってしまった叔父は、横たわる叔母のベッドに、必死によじ登り、叔母の頬を両手で覆う。―――その姿に胸を締め付けられ、気付けば涙を流してしまっていた。
そんな資格すら俺にはないのに………。
―――約、一年前、叔母に身内以上の感情を抱いてしまっていた俺は、叔母に甥っ子以上の感情を抱いてもらおうと求めてしまった。そんな俺に戸惑う叔母。それに叔父が気付き、崖山問題へと繋がった。………そう。叔父の下半身付随は俺のせいなのだ。
―――叔父を探しだした従兄弟の倖宏までもが、腕に後遺症を残してしまう。………橘の跡取りなのに…。全て俺がぶち壊してしまった。―――倖宏が小さい頃から、抱えていた闇も俺のせいだった。
あいつは何度も違うって証明してくれてた。俺や琢磨が居てくれるだけで助かってるような言葉も掛けてくれていた。その度に俺は救われていた。………だけど、今回ではっきり思い知らされた。俺は、倖宏の疫病神だということを…。
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