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おかげで真由子から国際電話で瑠威に『あんたたちは何しているのよ!』とクレームを受けたのは言うまでもない。
(俺がこれ以上アメリカにいたらとんでもないことが起きそう・・・。)
それでも瑠威は二年間、彼なりに必死で働き続けた。
誠一の突然の来訪やら嫌がらせのような日本での騒ぎやら、真由子から『どうにかしてよ!』と泣きの連絡を受けては、ドッと疲れが襲ってくる毎日。
さすがに葵も海外支部の重役たちから話を聞いていたのか、任期三年目を目前にして葵は瑠威に『日本へ戻ってもいい。』という許可を出したのである。
葵からの連絡を受けて、瑠威は『やっぱり・・・。』と思い、落ち込んだ。
電話越しで落ち込んでいる瑠威に葵は苦笑しながらも『良い経験だっただろ?』と落ち込む義理の息子を励ました。
確かに上に立つことで色々な経験をさせてもらい、色々な意味で勉強になったのは確かだ。
しかし、個人的な理由で周囲に迷惑をかけたのは社会人として恥ずかしい。
義父の言葉に甘え、渋々と帰国をした瑠威を待っていたのは、更なる災厄だった。
空港に着いた瑠威を待っていたのは、真由子と大介の二人で誠一ではない。
誠一が迎えに来る旨を伝えたものの、二人は『却下だ!』とバッサリ斬り捨てると瑠威を事務所へと連行。
事務所に着くなり、応接室へ案内された瑠威はそこでとんでもない話を持ち出されたのである。
「はい???俺が真由子さんの後任で、Rougeのマネージャーに??」
「そうなの!ぜひ、瑠威君にお願いしたいのよ!」
「嫌ですよ!何でですか!」
断固反対!と言わんばかりに、瑠威は即座に却下すると、真由子が泣きながら訴えたのである。
彼女の話によると、真由子は十年前にある男性と結婚して二児の母親になっていた。
ところがお互いが仕事をしていたために擦れ違いが生じて六年前に離婚。
親権は真由子になったので大介が彼女の仕事をセーブさせ、家庭に専念させてあげようとしたものの、稼ぎ頭のRougeが海外ツアーを成功させた影響で忙しくなり、真由子は家庭と仕事の両立が出来なくなったのだ。
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