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 始まったのは配属異動されたその日の夜。  いつも以上にお酒を飲んでしまった瑠威は和敏の住んでいるアパートへ行き、そのまま関係を持ってしまった。  今でも思い返すが後悔はしていない。  元々、性に対しては抵抗もなければ『好きな人以外に操を立てる!』という考えも一切持っていない。  多分、十六年前までなら頑なに拒否をしているし、過ちを犯してしまったら泣きながら自分を責め立てただろう。  十六年前までの純粋な自分と今では雲泥の差だ。  男でも女でも快楽を求めるのなら、誰だっていい。  信じて一途に思っていても、全てが自分に返ってくるわけではないというのを十六歳の時に体験して実感しているからだ。  和敏との件も『欲求不満を解消』という感じでしか、深く考えてはいないのだ。  一度だけ、和敏から『恋人として付き合わないか?』と聞かれたことがあるが、丁重に断った。  その時の断り文句は『特定の相手を作りたくない。』と瑠威は答えたが、本当は違う。  好きになって信じて裏切られたら立ち直れないと思っているからだ。  前の恋を忘れるために、立ち直るために、どれぐらいの時間を要したか。  母親の都合でなければ、ここにはいないと今でも考えてしまう。  データを保存した瑠威はデスクから離れると和敏に『打ち合わせに行ってきます!』と言ってその場から離れた。  そんな彼の後ろ姿を、和敏は切なそうに見ていたことを瑠威は気付いていなかった。
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