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 外に出れば、嫌でも耳に入ってくる旋律が充満している。  人気アーティストである以上、そして自分が音楽情報誌に関わる職業をしている以上は仕方がないし、避けて通れぬ道だとは思っている。  それでも神経を逆なでするぐらいのものはあるなと、歩きながら瑠威はハアッとため息を吐いた。  大手CDショップの前を横切ろうとすると、店頭の新譜コーナーの前には女の子たちが悲鳴を上げて盛り上がっている。  それを見てフッと笑みを浮かべる自分。  彼女たちの手に持っているCDジャケットを見て、瑠威は昔を思い出していた。  今思うと、あの頃の自分は幼く、そして世間知らずだったのだと思う。  十七年前のあの時、十五歳の自分は幼いながらも、あの恋は一生ものだと思っていた。  いや、そう思いたかったのかもしれない。  ただ誰かに必要とされたくて、誰かを求めている自分がいた。  平凡な人生を送る、平凡な人間の、高望みした願望。 『他人とは違う!』という気持ちが強かったのだろう。 分からない焦りと恐怖に追われていた気分だった。  結果、一生ものだと思っていた恋は、自分から断ち切ることで終わりを迎えてしまった。  いや、断ち切ったのではなく断ち切るしかあの時はそれしか術はなかった。  唇を重ねても、肌を重ねても、愛の言葉を交わしても、互いの気持ちが決して伝わるものではないと思い知らされたからだ。  それだけ学べたのは、良い人生経験だったのだろう。  店頭でボウッと立ち止まっていた瑠威の頭上から、突如として大きな音楽が聞こえてきた。 「何だ?」  驚きながらも瑠威は少し顔を上げ、頭上に視線を向けた。  販促用として設置したのか、ショップの壁には大きな液晶ハイビジョンの画面が設置されており、映像が流れていた。  そこには懐かしい面々が映し出されている。  通り過ぎていく人たちが液晶ハイビジョンに視線を向けては、色々な行動を取っていく。  興味のない人間は通り過ぎ、ファンであろう人間は立ち止まって一緒にいる人間とキャーキャーと盛り上がっている。 カップル連れだと女が目を輝かせている隣で男がへこんでいるのを見ると、失礼だが笑ってしまう。  瑠威は人間観察をしながらも、頭上にある映像を眺めている。  
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