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混乱している素振りの瑠威を見て、誠一は言葉を続けていく。
「瑠威の気持ちは?瑠威は・・・やっぱり俺のことが嫌いなのか?」
悲しそうな表情を浮かべて誠一が問う。
その問いに瑠威は即座に答えることができない。
いや、答えられないのだ。
何故なら理由は一つ、彼の封印し続けていた誠一への感情が徐々に解けているからだ。
『好きだ。』という、十六年以上も封印した瑠威の気持ちが、涙と共にあふれ出していく。
「・・・・になれるわけがない。」
「瑠威?」
「そうだよ!認めてやるよ!俺はあんたが今でも忘れられないし、好きなんだよ!せっかく忘れようとしたのに、違う人を好きになって幸せになってあんたを見返したいと思っていたのに!どうして!どうして・・・。」
自らの命を絶つぐらい、瑠威は誠一が好きだ。
十七年前のあの時から、瑠威にとって誠一は『全て』だ。
だが、十六年前の辛い決断をした時に誠一は『全て』ではなくなり、瑠威は苦悩した。
それに耐えられないから留美子に助けを呼んだし、自らの命を絶とうとした。
あの時、あのまま死ねたらどれだけ楽だったのだろうかと今でも考えてしまう。
同時に、あの時に自分が死んだら後悔していたのかもしれないとも考える。
誠一のためと言いながら、結局は自分が彼に拒絶されるのが嫌だから、真由子と大介の言葉に素直に従った。
今でもあの時に『どんなことがあっても、誠一さんと別れたくない!』と言い切れなかった、幼い自分に腹が立つ。
涙を流しながら、瑠威は彼にぶつけたのである。
「あの頃の俺はただ、居場所が欲しかっただけなんだ。だから、あんたを逃げ道として求めていた。それがいつしか好きになって、あんたを失うことが怖くなった。でも、俺はまだガキだから大人の事情を受け止めなくちゃいけないと思ったから、だからあんたに別れの言葉を言ったんだ!本当はあんたが好きで離れたくなかったのに・・・・。」
「瑠威。」
「せっかく、あんたのことを忘れて別の人を好きになろうとしたのに!どうして俺を苦しめるんだよ!どうして昔の俺に戻そうとするんだよ!俺はもう・・・・。」
泣きじゃくる瑠威を優しく抱き締める。
昔は二十センチ以上も身長差があったのに、今では十センチ弱も違う。
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