現在  6   ーLoving youー

12/19
前へ
/220ページ
次へ
 彼が成長したのだと、誠一も分かるぐらいだ。  だが、泣きじゃくる姿は昔と変わらない。  素直になれないところも、昔と変わらないと思いながら、誠一は笑みを浮かべて泣きじゃくる瑠威を優しく抱き締める。  彼の温もりを感じ、瑠威の心は十六年の記憶を思い出す。  辛くて悲しくて、それでも誠一を嫌いになれない自分に今でも苛立ちを覚えるが、根本では彼を拒絶することができない。  瑠威を抱き締めながら、誠一はもう一度告げる。 「俺は瑠威が好きだ。この先、どんなことがあっても今度こそ瑠威を離さない。」 「誠一さん・・・。」 「だから、もう一度やり直そう?瑠威」 「・・・・。」  ゆっくりと少しだけ誠一から離れ、瑠威は涙で潤んだ目で目の前にいる愛しい人の表情を見つめる。  十六年前と違って、皺が所々に見えるが穏やかな目は昔と変わらない。  泣いている瑠威を見つめて、誠一は同じ言葉を復唱した。 「今、ここから新しい恋をしよう?瑠威。」 「誠一さん・・・。」  静かに瞼を閉じると、唇に何かが触れた。  唇の感触も、温もりも、全て覚えている。  毎日のように感じた自分だけの特権だと思っていた誠一のキス。  角度を変えながら啄むような誠一のキスを、瑠威はしっかりと受け止めた。  互いの唇が離れると、瑠威は涙を浮かべながらクスッと笑う。  それを見て誠一が『何で笑うの?』と聞くと、瑠威は笑顔で答えた。 「やっぱり、俺は誠一さんとのキスが好きだなって。」 「・・・・それは、誰と比べているんだ?」  ピキッと十字皺を浮かべると、誠一は一瞬にしてブリザードを体全体に発生させると、瑠威はケラケラと笑いながら彼から離れてその場から逃げ出した。  思っていたことをサラッと言ったのがまずかったのだろう。
/220ページ

最初のコメントを投稿しよう!

318人が本棚に入れています
本棚に追加