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彼が成長したのだと、誠一も分かるぐらいだ。
だが、泣きじゃくる姿は昔と変わらない。
素直になれないところも、昔と変わらないと思いながら、誠一は笑みを浮かべて泣きじゃくる瑠威を優しく抱き締める。
彼の温もりを感じ、瑠威の心は十六年の記憶を思い出す。
辛くて悲しくて、それでも誠一を嫌いになれない自分に今でも苛立ちを覚えるが、根本では彼を拒絶することができない。
瑠威を抱き締めながら、誠一はもう一度告げる。
「俺は瑠威が好きだ。この先、どんなことがあっても今度こそ瑠威を離さない。」
「誠一さん・・・。」
「だから、もう一度やり直そう?瑠威」
「・・・・。」
ゆっくりと少しだけ誠一から離れ、瑠威は涙で潤んだ目で目の前にいる愛しい人の表情を見つめる。
十六年前と違って、皺が所々に見えるが穏やかな目は昔と変わらない。
泣いている瑠威を見つめて、誠一は同じ言葉を復唱した。
「今、ここから新しい恋をしよう?瑠威。」
「誠一さん・・・。」
静かに瞼を閉じると、唇に何かが触れた。
唇の感触も、温もりも、全て覚えている。
毎日のように感じた自分だけの特権だと思っていた誠一のキス。
角度を変えながら啄むような誠一のキスを、瑠威はしっかりと受け止めた。
互いの唇が離れると、瑠威は涙を浮かべながらクスッと笑う。
それを見て誠一が『何で笑うの?』と聞くと、瑠威は笑顔で答えた。
「やっぱり、俺は誠一さんとのキスが好きだなって。」
「・・・・それは、誰と比べているんだ?」
ピキッと十字皺を浮かべると、誠一は一瞬にしてブリザードを体全体に発生させると、瑠威はケラケラと笑いながら彼から離れてその場から逃げ出した。
思っていたことをサラッと言ったのがまずかったのだろう。
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