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ライブ会場に戻ってから、誠一は舞台に戻ると観客たちに脱走したことに対して頭を下げて謝罪し、ライブを再開させた。
脱走した時間は約三十分。
その間は蓮次と冬哉と祥平の三人が世間話と、祥平の楽器オンパレードで間を繋げていたが、三十分が限界だった。
舞台裏ではスタッフたちが悲鳴を上げ、各関係者たちからのクレーム対応をしていた真由子がブチ切れ、誠一に連絡を取ったのである。
ライブが終了すると、真由子が顔を真っ赤にして誠一に『あんたはプロのアーティストとしての自覚はないのか!』と怒鳴りながらガミガミと雷を落とした。
その後ろでは十六年ぶりの再会ということで、蓮次が嬉しそうな表情で瑠威と喋っている。
「瑠威君!来てくれていたんだ!」
「蓮次さん、その節は本当にごめんなさい。それとお子さん、おめでとうございます!」
「ありがとう!今度、ぜひ会いに来てよ!超激可愛いから!」
和気藹々と蓮次と喋っている瑠威を見て、真由子に怒られていた誠一が注意を始めた。
「蓮次!瑠威と楽しそうに喋っているんじゃねえぞ!」
「誠一!あんた、反省していないの!」
「はははは・・・。」
瑠威は呆れてしまい、祥平と冬哉は苦笑しながらも温かい目で三人を見守っていた。
そんな彼らの後ろでは、大介がキリキリと痛む胃を押えながら明日以降のことを考えては眉間に皺を寄せている。
社長として各方面に謝罪と週刊誌などのマスコミ対応に追われるのが目に見えているのだろう。
本当に申し訳ないと思いながらも瑠威は笑ってごまかすしか術がなかった。
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