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翌日、スポーツ新聞の一面にはでっかく『セイイチがライブを脱走!』と掲載され、事務所の社長である大介が関係者たちの前で頭を下げ、更には誠一と共に謝罪会見にまで発展したのだ。
結果、誠一は一カ月の自宅謹慎と活動禁止命令という処分が下された。
一方、脱走した時にそのきっかけを作った瑠威に対しては、和敏からしっかりと雷を落とされた。
それが原因で瑠威は退職するその日まで、毎日のように大量の仕事を押し付けられては残業の毎日を送る羽目になったのだ。
お互いに多忙のため、瑠威と誠一が二人で過ごせるようになったのは年が明けてから二週間後のことだった。
誠一から連絡を受けた瑠威は、彼から指定された場所へ向かうとそこにはシルバーの車が停車されていた。
中にはサングラスをかけた誠一が運転席に座っており、ジェスチャーで瑠威は助手席に座った。
車を発進させると、誠一は一カ月の謹慎生活の愚痴を瑠威に伝えた。
どうやらマンションに監禁状態にされてしまい外にすら出ることができなかったらしい。
必要最低限の買い物はネットで配送してもらい、それ以外は机と睨めっこだ。
おかげで大量の歌詞が完成し、それらを蓮次に託して次の新曲用の歌詞を選別しているそうだ。
蓮次曰く『ほとんど、同じ感じの詞ばかりじゃねえか!』らしい。
瑠威と再会できたことが本当に嬉しくて、思わず気持ちが歌詞に反映されたのだろう。
助手席でその話を聞いていた瑠威は恥ずかしくて、穴があったら入りたい気持ちになっていた。
数十分後、マンションの地下の駐車場に入り車を停車させると降りるように言われた。
車から降りると誠一に案内され、地下駐車場からエレベーターに乗って六階まで上がると、そこから更に歩いた。
歩いて一分、六一〇号室の前に立ち止ると誠一がポケットからキーケースを取り出し、鍵を開けた。
彼の持っているキーケースを見て瑠威は驚きを隠せなかった。
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