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何と、彼の持っているキーケースは十七年前に瑠威がお小遣いで初めて誠一にプレゼントしたものなのだ。
かなりの年月が経っているため、キーケースはボロボロ状態だが誠一は今でも使っている。
これには驚きを隠せなかったが、同時にザザッと引いてしまった。
ドアが開き、中を案内されると前に住んでいた部屋以上に広くて驚きを隠せなかった。
そんな瑠威に誠一がニッと笑いながら口を開いた。
「前の部屋はお前との思い出が多くて辛くなったからここに引っ越したんだ。セキュリティーも前のマンションより良いし、何よりも六一〇っていう番号が空室だったから、速攻で契約したんだ。」
「えっ?ここ、賃貸じゃないの?」
「ああ、一括で買ったんだ。」
「・・・・・・・・・。」
(これだから、売れっ子アーティストは・・・。)
金銭感覚が違うと実感するも、瑠威は作り笑いでスルーした。
中を案内されながら、瑠威は色々な疑問を誠一にぶつける。
「何で六一〇号室なの?」
「語呂合わせで『ルイ』だから。」
「・・・・・・。」
(この人、もしかしておかしくなったのか?)
さすがにドン引きした。
気分を変えて、部屋が広いことを聞くと誠一は即座に答えた。
「いつか、瑠威と一緒に暮らせるようにと思ってね。」
まるでプロポーズとも取れる同棲話に瑠威は頬を赤く染めながらもプイッと顔を逸らした。
そんな愛しい恋人の態度を見て、誠一はフッと笑いながら彼を背後から抱き締めると、右手で瑠威の左手を掴んだ。
そして薬指を二本の指でマッサージするように揉むと、いつの間にかそこにはプラチナのリングが嵌められていた。
これには瑠威も驚いて黙り込んでいると、誠一は彼の耳元に囁いた。
「これはプロポーズだよ、瑠威。」
「はっ???」
「良かった、リングのサイズが合って。十六年前に作ったから、サイズが合わなかったらどうしようかとドキドキしたよ。」
「何だって???」
十六年前、誠一は瑠威との擦れ違いが起きているにもかかわらず、彼の誕生日を忘れたことはなかった。
以前、瑠威がテレビで恋人同士がペアリングしているのを見て羨ましがったのを誠一は覚えていたのだ。
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