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「十六年前の瑠威の誕生日に贈ろうと思ったんだけど、迎える前に瑠威と別れただろ?それからずっと、大事にしていたんだよ。」
「十六年前って!しかも、プロポーズって?」
「ああ、誕生日にこのリングを渡して瑠威が高校を卒業したら一緒に暮らそうと考えていたんだよ。」
(あの状況でよくそんなことを考えられるもんだよな・・・。)
部屋にとっかえひっかえ女を連れ込んではセックスをして、その場面に遭遇した瑠威に暴言を吐いたこともあれば、我関せずに継続させたこともあれば、色々と思い出してきては怒りが込み上げてくる。
あの状況の中でリングを用意し、同棲話を持ち出そうとしていた誠一の神経が信じられないと、瑠威は思った。
彼の態度で考えていることが分かったのか、誠一は苦笑いをしながら言い訳を始めた。
「瑠威が怒るのも無理はないともっているし、俺もバカだと思っているよ。でも、あの時は俺なりに瑠威のことを真剣に考えていた半面、天狗になっていたからさ・・・。本当、過去に戻れるのなら自分を殴って説教したいぐらいだよ。」
「俺は今、あんたに説教したいよ。」
怒りマークを浮かべて瑠威がバッサリと言う。
それを聞いて苦笑いをしながらも、誠一は瑠威を自分の方へと向かせると真剣な表情で告げた。
「瑠威、今日から俺たちの関係を始めよう。」
「誠一さん・・・。」
「お互いに色々とあったけど、これからは『現在』を生き、『未来』に向かって共に歩んでいきたいんだ。」
「・・・いいよ、あんたとなら一緒に歩んでも。」
「瑠威・・・。」
「ただし!お互いに浮気はダメだ!それと、お互いの生活や人間関係に関しては多干渉しない!それでどうだ!」
「了解。でも、瑠威がかまってくれないと俺は瑠威を独占するからな?覚悟しておけよ?」
ニッと誠一が笑うのを見て瑠威は嫌な予感が過って不安になってくる。
本当に昔の、クールで俺様気質の誠一なのか?と疑ってしまうが、それは自分も同じだと思った。
あの頃とは全く違い、言葉も荒くなれば性格もひねてしまった。
性格に関しては多分、留美子の影響かもしれない。
それでも根本的な部分は変わっていないと分かると、瑠威はフッと笑った。
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