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「で?何でアメリカにいるお前が俺の目の前にいるんだ?瑠威」
「俺だって知りたいですよ。」
眉間に怒りマークを浮かべながら、瑠威は背後にウルトラ級のブリザードを降らせていた。
テーブルを挟んで彼の目の前に座っていた和敏は呆れているのか、微妙な表情で超ご機嫌斜めの瑠威を見て苦笑いを浮かべている。
「仕事を辞めて海外で義父の事業の手伝いをするって言ったのが二年前の話だろ?」
「俺だって当分の間はアメリカで仕事をしているつもりでしたよ。仕方ないでしょ、どっかのバカタレが俺を日本に連れ戻すためにとんでもないことをやらかすんですから。」
言葉の節々に苛立ちを感じる。
彼の身上を察したのか、和敏は苦笑しながらも『ご愁傷さま。』と言いながら心の中では爆笑していた。
(本当に、何をやらかすんだよ!あのバカ俺様男は!)
コーヒーを飲みながら、瑠威は散々な日々を思い出しては怒りを抑えていた。
事の起こりは二年前のことだ。
誠一と両思いになりながらも、瑠威は葵との約束でアメリカへと旅立った。
当然、誠一は大反対をした。
「何で両思いになって、同棲しようと言っているのにアメリカに行くんだよ!」
「しょうがないだろ!決定事項なんだから!」
まさか誠一とよりを戻すことなど、米粒も考えていなかった瑠威は頭を悩ましていた。
それでも男に二言はなく、葵との約束を優先事項にしたのである。
ギャンギャンと子犬のように吠える誠一を無視して、瑠威は借りていた部屋の契約を解除し、家具類のほとんどはリサイクルショップへ。
必要だけどアメリカには持っていけない家具や荷物はしばしの間、誠一の部屋の空き室に置かせてもらうことにした。
渡米の準備をしながらも、誠一は毎日のように抗議をし続けていたがガン無視する。
それから一週間後、瑠威は自分を引き留めようとしている誠一の手を振り払い、渡米。
用意されていた部屋の整理を一段落させてから、瑠威は葵の会社の海外支部の支社長として就任し、毎日を多忙に過ごしていた。
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